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第26話 甘く溶かされる夜と朝

last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-16 19:32:02

 照明を落とした部屋は、外の世界から切り離されたみたいに静かだった。

 カーテンの向こうの街の気配は遠くて、ここには私とDの呼吸しかない。

 Dは私をベッドに導いたけれど、すぐには横にならなかった。

 シーツを整え、枕の位置を直し、それから私を見る。

「……無理はしないで」

 その言葉が、胸の奥にやさしく沈む。

「無理してないわ」

 強がりじゃない。

 本当に、そうだった。

 Dは小さく笑って、私の隣に腰を下ろす。

 触れたのは、手首だけ。

 脈を確かめるみたいに、指先がそっと添えられる。

「そうね。ちゃんと、生きてる顔してる」

「どういう意味?」

「壊れてる人は、もっと静かよ」

 そのまま、Dは私の手を引いた。

 キスは、すぐじゃない。

 額に。

 こめかみに。

 頬に。

 じらすみたいに、でも乱さない。

 そして、ようやく唇に触れた。

 深くない、確かめるだけのキス。

 私は目を閉じて、それを受け取る。

 拒まない。

 でも、急がない。

 Dの手が背中に回り、服の上からなぞる。

 押さえつけるでも、引き寄せるでもない。

 ——ここにいていい。

 そう言われているみたいな触れ方。

「……今日のあなた、綺麗ね」

 一瞬、息が止まる。

「……あなたのおかげでしょ」

 自分でも驚くほど、素直な声だった。

 Dは一瞬だけ言葉を失って、それから、いつもより少しだけ近づいた。

「そう言われるの、弱いのよ」

 唇が重なる。

 今度は、さっきより深い。

 舌が触れて、息が混じって、思考が溶けていく。

 Dの手が服の端にかかり、ためらいなく引き上げた。

 肌に触れた瞬間、細い息が漏れる。

「あ……」

 恥ずかしさより、安心の方が勝っていた。

(ああ……Dには、いつも甘く溶かされてしまう)

 Dの指は、ちゃんと私の反応を待つ。

 早すぎない。

 でも、逃がさない。

「ね、朱音」

 顎に指をかけられて、視線が合う。

「これは、逃げ?」

 私は迷わず首を振った。

「違う。……私は、ここに来たかった」

 Dはそれ以上、何も言わなかった。

 ただ、ゆっくりと、深く、口づける。

 触れ合うたびに、呼吸が乱れていく。

 身体が熱を思い出して、考えることをやめていく。

 Dの手が腰に落ちて、引き寄せられる。

 密着した体温が、はっきりと「選んだ現実」を教えてくる。

「声、我慢しなくていい」

 低
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